君主を前に

 国王陛下を撮影する機会は、公の式典以外ではほとんど存在しない。しかも式典事は警備が厳重で、自由に撮影することは許されない。

 しかし年に数回、例外がある。例えば外遊やご静養へ発たれる際などは、撮影の許可を得れば、比較的様々な角度からの撮影を許される。しかし、万に一つの粗相も許されないという点では式典事以上に細心の注意を払わなければならない。

 その日、早朝の空港には国の指導者であるサイ・チョン上院議長、ヘン・サムリン下院議長、フンセン首相夫妻が、敷かれた赤絨毯に沿って顔を揃え、皆神妙な面持ちでその時を待っていた。出発予定時間のほんの少し前、国王陛下、王母陛下を乗せた御車が静かにゆっくりと飛行機に横付けされる。そして御車を御降りになった両陛下は微笑みを絶やさず、見送りの一人ひとりと手を取り合って挨拶を交わされる。

 神妙な面持ちでその時を待っていた国の指導者たちは平身低頭、頭を下げる。この国の指導者たちと王室は複雑な近代史を紡いできた。しかし、その場所には一切の雑音は聞こえな い。張り詰めた空気の中で、敬服し君主を慕う人々の姿があるだけである。外国人である私はその場にいることを身に余る光栄と自覚し、只々感銘を受けている。

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石川正頼

現地新聞社などローカルメディアをメインに仕事をする写真家。プノンペン在住。

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