ザッハ・トルテ

 およそ10年前、憧れのオーストリアにあるホテル・ザッハに初めて訪れた。真っ暗闇の中、白い建物がにゅうっと立ちはだかる。その真ん中にぼうっと光る”HOTEL SACHER”の金文字と、ピカピカに磨き上げられたガラス張りのエントランスに胸が高まった。

 伝統は、必ずしも美味しいとは限らない。素朴で少しぱさついた生地と、チョコレート(というよりもココアとお砂糖)の糖衣に一瞬口が固まった。

 が、いやいや、食べるのが目的じゃなくて、伝統を嗜むのが目的だろう、と自分に言い聞かせた。保存期間を高める糖衣は、ヨーロッパの伝統菓子にとって結構重要な要素なのだろう。

 本場が2層というなら、私は3層でいこう。今回はチョコレートと生クリームのみの糖衣をまとった、少し掟破りなザッハ・トルテを作りました。背徳は、やっぱり美味しいものだ。

 ”Es gibt nur ein original seit 1832. (=1832年来の元祖ザッハ・トルテ。)”この文言はホテル・ザッハしか語ってはならないようなのだが、ここは偽物天国カンボジア。誰が咎めよう。

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中村 典

中村 典

カンボジア在住歴4年。 料理研究家の母から学んだ懐かしいお菓子たち。美味しい食べ物で、人を幸せにし、人の思い出を彩るようなライフワークを実現するため、目下修行中。 詳しいレシピはFBからご覧いただけます!
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