平成最後のお正月に、日の丸ケーキを

 「もう歳になってきたんだから、来年からはおせち料理は作りませんよ、出来合いのものをお店で注文すると決めたんだから」。ここ5年ほど、年末になると決まって祖母が漏らすこの台詞、実は一度も叶ったことはない。去年のお正月だって、祖母宅を訪れると、お手製のおせち料理がズラリと並べられていた。創作料理が流行る中、過ぎたる創作を嫌うかのような祖母の「おせち料理」。鈍く輝く黒豆も、褐色に焼かれた伊達巻も、色彩豊かな炒り鶏も、年の功のなせる業。自分が作るおせちを、家族がいちばん喜ぶと知っているのだから、歳を理由にやめるだなんて出来っこないのだ。

 そんな祖母は、今年で御年88歳。日本の5%を占める85歳以上の人口のなかでも、こんなに頭脳明晰な”生ける女性セブン”には、なかなかお目にかかれない。朝の読経からはじまる一日は、新聞・テレビニュースおよび流行ドラマの視聴と、とにかく新しい情報の収集に抜かりがない。

 戦中、醤油商家であった祖母の実家は、朝鮮の元山に渡って商いをしていた。戦後、日本に引き揚げた後も苦しい時代を過ごしたと聞いているが、50代前半で未亡人となり、さらに昨年、愛娘が先に逝くとは、なかなか大変な人生である。それでも前向きに生きるのは、新しいモノに対する関心が尽きないからだと思う。そんな祖母を私はとても尊敬しているし、やっぱりお正月もおせちも待ち遠しい。

 2019年、平成最後の新年には、お正月の初日の出に掛けて日の丸をケーキで掲げてみよう。

 ”ジャポニズム”とは、”外国の人々による、日本文化への賛美”、を指すらしいが、西洋菓子に魅せられた私が作るお正月用ケーキはこちら。ビスキュイとラズベリームースの生地に、甘酸っぱいラズベリーゼリーの日の丸を担がせる。日の丸の周囲にはシックな色を纏わせ、”ジャポニズム”的構図を表現してみた。正月花の菊(マム)を添えたら、祖母のおせちともきっと相性抜群である。

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中村 典

中村 典

カンボジア在住歴4年。 料理研究家の母から学んだ懐かしいお菓子たち。美味しい食べ物で、人を幸せにし、人の思い出を彩るようなライフワークを実現するため、目下修行中。 詳しいレシピはFBからご覧いただけます!
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