魅惑の「チェック柄」 チェッカーケーキ

 カンボジアのクロマーは、もとより「チェッカー柄」であったのだろうか。はじめてクロマーを手にした時、伝統布と呼ばれるにはあまりにも西洋的な柄じゃあないか、これもフランスの影響かしら、と不思議に思った。

 そもそも「チェッカー柄」の起源は、古代オリエント紀元前3,000年に遡る。白・黒といった対色の正方形が交互に並ぶシンプルな「チェッカー柄」は、神が人間を駒として遊んでいるという前提のもと、「生と死」、「昼と夜」、「勝者と敗者」といった、二元的なこの世界を表現しているらしい。あぁ、なんと残酷だけど夢見がちな世界観であろう。自分の成功、はたまた失敗を神のせいにしてしまう古代人に、ちょっと親しみを覚える。

 一方、日本のチェッカー柄といえば、2020年東京オリンピックのロゴにもなった江戸時代の市松模様である。この市松模様に魅せられたフランス人が、ルイ・ヴィトンのダミエ柄を生み出したのは有名な話である。日本の市松模様の伝統が、フランスのルイ・ヴイトンの伝統を生み、更にその伝統が、フランス植民地時代のカンボジアでクロマーを生み(いや、これは流石に雑すぎる想像かw)……と連鎖が続いていく。こうして人間の創作活動における伝統は、沢山の人々の憧れによって紡がれてきたんじゃないかなと思うと、たった数ドルのクロマーもちょっと愛おしく感じる。

 ということで、今回作ったのは「チェッカーケーキ」です。伝統的な「チェッカー柄」には、王道のバタークリームが似合う。交互に組み合わせた白いスポンジと黒いココアのスポンジをバタークリームの層で優しく繋ぎあわせ、繊細な化粧を施す。現在のケーキのメインストリームはぶっちぎりでフワフワ柔らかな生クリーム系である中、舌でゆっくり溶けていく濃厚なバタークリームは、クリスマスケーキとしても相応しい。

 気づけばもう年の瀬、今年のわたしはどちらであっただろうか。「チェッカー柄」 の白と黒をフォークでつつきながら、ふと考える。

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中村 典

中村 典

カンボジア在住歴4年。 料理研究家の母から学んだ懐かしいお菓子たち。美味しい食べ物で、人を幸せにし、人の思い出を彩るようなライフワークを実現するため、目下修行中。 詳しいレシピはFBからご覧いただけます!
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